「ネェネェ。広瀬牧場って、この前タカくんが学校で体験に行った牧場じゃない?」「あ!そうそう、確かにそうね!」
それは、帯広のデパートで開かれた『スイーツフェア』に参加した会場でのひとコマでした。
スイーツを吟味しながら通り過ぎる、60代と30代と思しき母娘の会話が耳に飛び込んできました。思わず「お子さん、いつウチの牧場に来てくれたんですか?」と私。
「あれは確か...4、5日前だったよね」とその母娘との会話が始まりました。
「その日だったら、○○小学校の3年生ですよね?」
「そうそう。よほど楽しかったらしく、帰ってくるなり色んなことを話していたっけ。」
「どんな事を話していました?」
「牛に磁石を飲ませる話とか、牛も赤ちゃんを産んで初めてお乳を出すようになるとか!私たちも知らなかったよね。それに広瀬牧場さんでは毎日牛乳を飲んでいるから、75歳になるおばあちゃんも20代の丈夫な骨で、しかも虫歯もないんですってね!」
「そうですか!私の話も少しは印象に残っていたんですね。」
「でもさぁ〜(と少し言いにくそうに)...その夜、この娘と孫が一緒にお風呂に入ったのよ。そしてしばらくしたら『いやよ!やめてってば!』と言いながらこの娘がお風呂から飛び出してきたの!」
「へぇ~それで?」
「タカくんが乳搾りを習ってきたと言いながら、この娘のオッパイで乳搾りをはじめたんだって!」「ほぅ!」「まったく困ったものね!」「いやいやどうして、素晴らしいお子さんじゃないですか!」「え?どうして?」「先程、『牛も赤ちゃんを産まなければ牛乳が出ないことを私たちも知らなかった』と言われましたよね?でもお孫さんは、ウシもヒトも同じ哺乳類であることをしっかり理解されているんですよ!」「そういえばタカくんは『牛のオッパイもお母さんのオッパイも同じように温かかった。』と言っていたわね!」
今の日本は、24時間いつでも好きな時に好きな食べ物を手に入れる事ができます。この便利さに『食料が口に入るまでの長い長〜い時間と道のり』が隠れてしまい、意識をしなければそれを一生知ることもないし、見る必要も感じられません。
では『本物』とはどんなものなのでしょう。例えば我々の生産している牛乳は、牧場に最も近い工場で最短時間で加熱処理される場合と、遠くの大消費地まで生乳のまま運ばれ加熱処理される場合があります。これは賞味期限や消費期限表示という『時間』の問題と密接に関わっていて『どちらの牛乳がより本来の美味しさなのか』は二の次になっているのです。
子どもさんが小さいうちに様々な体験をさせてあげてはいかがでしょうか。そして様々な本物の味にふれさせてあげてください。
よく問い合わせがあります。
「2歳の子どもなんですが、搾乳体験をやらせてもわかるでしょうか?」と。
「わかるかどうかというより、親御さんの
『何でもやらせてみたい!体験させてあげたい!』
そのような子育て上の意気込みが何より大切なのではないでしょうか!」