砂上の楼閣
砂の上に建てた高い建物の事。
いくら立派な建物でも基礎がしっかりしていなければ、倒れ易い、と言う意味。
ここ2週間ほどニュースやマスコミ等で、牛乳を5,000t程廃棄しなければならない程需給が緩和しているとの報道がなされている。
23日の農業委員会総会開始前、一人の委員が「牛乳は大好きで毎日欠かさず飲んでいるけど、急に倍も飲めねーし!」などと申し訳無さそう話していたが、彼は重ねて「冬休みで学乳仕向けが余ると言うけど、夏休み冬休みは恒例なのに何故今年は余るんだべな⁉︎つい何年か前にはバターが足りなくて緊急輸入しなければなんて言ってたべさ!」と言うでは無いか。
これはコロナ禍と学乳ばかりでは無く、インバウンド推進政策による所が大きいようだ。ここ数年訪日観光客が増え続け、2019年は三千数百万人を記録した。その訪日客が、日本の牛乳は安心安全で合わせて美味しいと評価され、コンビニでの飲用牛乳の消費が相当数伸びていた事に加え、乳製品のお土産需要も相当高かった。それに連れてバターも緊急輸入か⁈と言うほど需給がタイトになっていた様だ。
自分も件の農業委員と同じく、当にその点が不思議で、Jミルクの職員にきいていたもので、知ったかぶりで説明した。
さて、日本の食糧自給率は36~37%と低迷を続けていると言う一つ現実がある。他方政府は日本の食料は、安心安全なので海外からの需要も高く、輸出に力を入れ、こちらも1兆数千億と農家の所得向上に寄与していると、政府は自画自賛だ。
日本の農産物の安心安全で高品質の強みを生かした政策は、コロナで国内需要とのバランスに綻びが出ている。さて輸出についても輸入国の都合でストップされたり、サプライチェーンの突発的な事件により滞る事も考えられる。
安心安全や高品質の強みを活かす政策は、「砂上の楼閣」で危うい!
但し、耕作放棄地を減らすと言う意味では、 一つの利点でもあるのだが...
でもやっぱり、食料自給率は上げなければ!
人間至処有青山
土屋直道君。
妹良子の婿さんで、自分にとっては義理の弟だ。
この妹夫婦は芽室町内で農業を営んでいる。
現在は長男の雅俊君と夏子ちゃん夫婦と4人仲良く力を合わせて、益々経営の伸張著しい優秀な畑作農家だ。
直ちゃん(直道君)は、今有る土屋家の繁栄は、一重に初代弥八おじいさんの開拓に対する熱い思いやその意思を硬く受け継いだ息子達(2代目で彼らの親世代)の不断の努力の賜物と、感謝の意と彼らの事績を顕彰し残そうと、渡道3代目となる従兄弟達と数年前から、情報集めに東奔西走し、このほど『人間至処有青山』と題する記念誌として結実した。
本の扉を開くと、最初の写真は初代の弥八さんはるさん夫婦がやさしげな眼差しでこちらを見つめている。
その土屋家は今から114年前の明治39(1906)年、現在の岐阜県安八郡神戸町から現在地に開拓に入った様だ。
明治39は未だ根室本線の狩勝峠は開通しておらず、青森から釧路まで船で来てそこから列車で十勝帯広に入った様だ。そして帯広川の縁を伝って現在地に到着。開拓の鍬が下ろされたようだ。
この記念誌、写真や年表もふんだんに掲載され、最後には114年に亘り繋がっている親類縁者の系図が幾重にも折り畳まれて綴られている。
労作だ!
直ちゃんの長男雅俊君は、地域の仲間達と落花生を地域の特産物に育てようとがんばっている。
土屋家は、今後益々繁栄する事請け合いだ。
戦利品
上の製品は何れも帯農の生徒達が商品化し、アグリス(帯農敷地内に有る帯農ブランドの売店)で販売している商品だ。
10月29日には酪農科学科が。昨日11月26日には食品科学科の生徒たちが農場見学に来てくれた際のお土産だ。しかし母校の隆盛と後輩達の頑張りが嬉しくて、中々手が付けられない。賞味期限間近になる迄、眺めて楽しもう。
近年、農高で講演をさせていただいたり、毎年のように見学に訪れてくれるのだが、我々が在籍した、え〜と...⁉︎55年前。そうか半世紀も前か...。その頃との決定的な違いを、まざまざと感じざるを得ない。
我々が在籍していた頃は女子生徒は皆無。我々はS42年入学組なんだけど、2日間に亘る受験当日、受験生の一人が、今年の酪農科には3人の女子受験生が居ると聞いていたけど、その受験にすら顔を出してもいない。残念。とボヤいていたものだ。しかし、現在は女子生徒がかなりの割合で入学してきているようだ。
先月の酪農科学科では39人中7〜8人の女子生徒がおり、『おー、隔世の感だなぁ!』と独りごちていたが、昨日の食科は女子だらけ。1人の子に聞いてみると、男子7人に女子32人との事でホントに驚きだ。
近年言われている所の男女共同参画が、農業の世界でもすごく進んでいる。
農業の未来は明るい!!
さて、ポテトチップスにトマトジュース、そしてブルーベリージャム。
食べるの楽しみ!
ゴーストライター
9月17日だから丁度2ヶ月前、全道の公立学校の教頭会全道大会で、食育について基調講演させて頂いた。
8月に開催された東京オリンピックに合わせる様に、コロナの第5波が猛威を振るっていたため全道大会の再延期が危ぶまれていた。
なんとかリモートで開催となり、会場に入ると、目の前、正面には動画撮影用のカメラとそれを操作する人がいるだけ。右手には進行担当が3名。左正面には関係の先生方が数名。こう言った会場での講演会が、上記の写真だ。
十勝農楽校を始めて30年、漸く人前で話す事が苦にならなくなっていたのだが、カメラのレンズに向かって、恰も聴衆に向かう様に話すのは、これ又至難の技だ。その証拠に、顔が硬い。
聴衆の顔が見えると、理解しているのかどうか無反応の人、はたまた講演者が熱弁を振るっても居眠りを続ける人。中には頷きながら聞いてくれる人には凄く力付けられる。が、義理で頷いているとしか思え無い人もいて一喜一憂だけども、何れにせよ、カメラに向かっての話しは難しい。
なつぞらの撮影現場に一ヶ月弱、演技指導を担当しツアーに参加した経験から、これでは、オレは俳優にはなれないなと、痛感した(誰もオファーなんてしてくれる訳は無いが...)瞬間でもあった。
そうそう、今日は「ゴーストライター」についての話し。前振りが長すぎた。
先週始め、研究大会の事務局を務めた、帯広市立西小学校教頭の武田先生から連絡があった。
過日開催された全道大会の報告書の作成に当たり、廣瀬さんの基調講演も全文掲載する予定で、その為の文字起こしが済んだので、一度お目通し下さい、との事だった。それはA3の用紙に写真入りとは言え8枚である。45分の講演って文字にすると、これ位の分量になるのかと、初めて実感した。
これが8枚だ。
武田先生は、何か間違いがあれば、朱を入れて訂正してもらえればと言う事だった。果たして目を通してみると......⁉︎
昔、中学校で、江戸から明治に変わった頃二葉亭四迷(だ調)、尾崎紅葉(である調)らが中心となって言文一致運動がおこったと、習った。文語文(漢文)から現代風の平易な口語文が確立されたのだが、自分にとってそれと同じ位の革命を感じた。
まず自身の講演の文字起こし文を読んでみると、兎も角、「なんじゃこりゃ!」だ。
例えば、文字起こしそのままでは...
「話しは遡って、2年ほど前から皆様方の研究大会に提言をしてほしいというお話しをいただきながらですね、コロナで長い時間、皆さん苦労されたようです。私も期待半分、今日とうとう来てしまったなと言うそんな綯い交ぜな気持ちでおります。」だって。なんのこっちゃ、これは!
そこでスムーズな口語体に直すと
「話しは遡りますが、2年ほど前に皆様がたの研究大会に提言をして頂きたいと依頼された直後、コロナウイルスが世界中に蔓延し、延期を余儀なくされたとの知らせを頂きました。コロナ禍の収束が見通せない中、皆様方も大変ご苦労されたのではないでしょうか。私自身も依頼された高揚感と、果たして上手く伝えられるのかと言った任の重さに苛まれる日々でしたが、今日とうとうその日が来てしまったなという思いです。」
と言う具合に、A3のペーパー8枚分の大半を目読に耐えるように書き直した。
iPadで打ち直したのだが、A4一枚につき1,849文字×十枚。計18,000余文字言うボリュームで、原稿用紙だと45枚くらいか⁈なるほど時間がかかるはずだ。
よく有名人が自伝などを出す場合、口述筆記をしてもらい、それをゴーストライターが編集すると聞いた事があるが、自分の文章をゴーストライターのように編集し直すのも、大変な作業だった。
そして先程、西小学校の武田教頭に無事渡す事が出来た。