ローフの繰言
65年程前の事。
春の蒔き付け時期に小学校でも農休日があった。
家業が農業と言う事で、子供の頃から農作業の手伝いは当たり前の時代でもあったが、
当時も子供は子供。
生活の糧を稼ぐのに一生懸命の大人たちを見ていても、自由に遊びたかった。
その日も朝から農作業が始まる。
初めの内は一生懸命なのだが直ぐ飽きて来る。そうすると「フミが来てくれて大助かりじゃ。」とか「晩ごはんは、ぼた餅でもばあちゃんに作って貰おうか」
或いは「この前◯○のおばちゃんがお土産に持ってきて仏壇に供えてくれた千秋庵のお菓子、下げて来たでな、あそこ迄行ったらいっぷくしょまいか。」
仕事終わりには必ず「フミのお陰でこんなに仕事が進んだ。えらかったなぁ(美濃言葉でお疲れさん)」と労ってくれる。
兎も角、声を荒げず、誉めたり食べ物で釣ったりとあの手この手を使う祖父に踊らされていた。
明治37年生まれの祖父種治は、その一服の時間によく諺(言い習わし)を使って子供に農作業の極意⁈を教えてくれた。
「秋の一日は春の七日じゃ。9月15日には早霜が来るでな」
その意味は「春は一日延ばしに農作業をやっていても何の問題も感じられんが、その延ばした一日が秋の収穫時期になると、
霜が降りて作物が全滅する事もあり、一年の働きが水の泡になってしまうでなぁ」
「他人に先んじて仕事を始める!新しい事にトライする。」
早すぎて失敗はした事はあまり無い
それにしても今年の農作業は遅れている。