啄木鳥と雀
老両親との食卓での話し。
昔々、ハツばあちゃんに「悪さばっかりしていると、キツツキのように自分で木に頭を
カンカン打ち付けないと、エサが食べられ無くなるんじゃ!」って言われた話しをしたら、
間もなく96才になるオヤジが話しの全貌を聞かせてくれた。
ハツばあちゃんが言うに
「スズメの顔をよく見よの。
クチバシの下や頰が黒くなっているじゃろ!
昔むかし、あるスズメが、親が亡くなったとの知らせを受けた。
一刻も早く親の顔が見たいばっかりに、
顔の化粧や歯に鉄漿をつけるのももどかしく、慌てて逢いに出かけた。
それでスズメは嘴の下から喉にかけて鉄漿が流れた跡が付き、
頬にもついてしまったそうな。」
「それに引き換えキツツキは、親の訃報を聞いても親に会うよりもきちんと化粧や身繕いを優先して、
慌てる様子も無く出掛けて行ったそうな。
そんな親不孝なキツツキはそれ以降、エサを食べる時は、木に頭をカンカン、カンカン
と、打ちつけないとエサが食べられなくなったんじゃ。
親不孝をしたキツツキは、あ、イタタ!痛た!と思っても、自分で頭を木に打ちつけないと
エサが食べられ無くなったんじゃ。」
(コンクリート製の電柱のステップ用のネジ穴をつっついている。)
それに引き換えスズメは
「慌てて出かけたもんだから、顔も煤けたまま。
頬やアゴに鉄漿の跡が残るザッシも無い顔になってしまったけど、
人間様もよう口に出来ない米を真っ先に食べられるんじゃ!」
と、「兎と亀」や「猿と蟹」の様に、啄木鳥と雀が対になった話だったんだ。
明治9年生まれのハツばあちゃんの思い出を語れる。
何と幸せな事か。