ディナー
吾輩は猫です。
吾輩は「トラねえ」と呼ばれている、れっきとした2才の牝猫なのよ。
8月に2度目のお産で5匹の子供を授かったの。勿論1度目と2度目のお父さん猫は別猫。私達は自由に牡猫を選べるのよ。今回の仔猫達はお父さんに似た黒猫が多いの。
そうそう、黒いと言えばカラス。牛舎でミルクをもらおうと幼い子猫を連れて出かけたら、スーッと音も無く憎っくきカラスが低空で飛んできて、一番後ろをついてきていた仔猫を、カラスのくせにワシづかみ。「ニャッ...」と驚く仔猫の声に振り向くと、あっという間に高い空へ連れ去られてしまった。可愛いそうだけど何も出来なかった。
実は私達、廣瀬家には生活を応援して貰っているんです。なんたって私達家族の他に姉家族、それに母も最近4匹の子猫を産んだので、総勢20匹余りの大家族なんです。家人の残り物や牛舎に行けば牛乳(加熱殺菌していないから生乳って言うらしい。生乳は第三者にそのまま提供してはいけないと言う法律があるらしいけど、私達には関係無いわ。)をたっぷりといただけるのよ。有難いわ。
しかし私達は一歩屋外に出ると、所謂弱肉強食の世界にいきているの。だから私の子供がカラスにさらわれちゃった事は悲しいけど、反対に私もたまには親ネコらしく仔猫達にレアなお肉も食べさせてあげるのよ。
そんなこんなで、牛のエサを蓄えてあるバンカーサイロの近くをパトロールしていると、果たして目的のネズミがいた。私は抜き足差し足で音もなく近づき、何なく捕まえた。「トラトラトラ(ワレ奇襲ニ成功セリ)」だ。獲物はまずまずのサイズ。
ルンルン!
オット「シャーッ、シャーッ!」
お姉ちゃん止めて。お姉ちゃんの家族にあげる余裕は無いわ!
2才年上のお姉ちゃんとは、私の仔猫ちゃんと遊んで貰ったり、寒い時などは猫ダンゴになって温めあったりする仲良しなの。でも餌だけは別よ、分かって⁈
お姉ちゃんも諦めてくれた見たい。
芝生の上で少し一休み
さてさて、姉もすっかり諦めたようだし、余り休んでいると冷たくて硬くなり、折角のディナー、レア感が無くなり仔猫達をガッカリさせてしまうので、そろそろ行こか。
仔猫達とのディナーを終えて「トラねえ」は、私より幼い仔猫を抱えている母親は名前が「マドラー(真トラ)」といって全身がトラ柄でスズメなども獲ったし、おばあちゃんは「バトラー(婆トラ)」と言って三代に亘ってトラ柄なんだけどハトやリスも獲ってくる名ハンター。
ほかに親戚筋には毛並みが薄茶色の「鹿毛トラ(上杉景虎)」や逃げ足の速い高飛びの「高トラ(藤堂高虎)」。外国では目がブルーで上品な「品トラ」が居たっけ。エッ本名は確か「フランク・シナトラ」だったわ。
話しは変わって猫の世界はフリーセックスが当たり前だけど、私達家族は有名どころの牡猫を相手にしている、名家の血筋なのよ。
私はその内カラスを獲って仔猫の仇を討とうと思うの。
「真トラ」や「婆トラ」の出来なかった事、絶対やって見せる。