小説家乃南アサ
チーム・オベリベリ、読み進める程にのめり込んでしまう。
今朝程には、第四章276頁まで進んだ。
鈴木銃太郎の妹カネの目を通して、晩成社の構成員依田勉三、兄の鈴木銃太郎そして夫の渡辺勝の3人がお互い信じ合い、助け合う姿が描かれている。その3人の姿からカネはチーム・オベリベリと名付けている。
第一章は、キリスト教の共立女学校でのカネの生活ぶりが描かれている。
第二章は兄の銃太郎が豪農の子弟依田勉三と意気投合し、同じ学舎に通う渡辺勝も加わり北海道開拓に夢を燃やす青春群像だ。
ま、あまり詳細に感想を書いてしまうと、面白味が薄れてしまうのでこの辺にしておくとするが、我々が知っている晩成社の苦労ぶり(霜害、蝗害、風土病など)が時系列に並び、それでいてカネの日々の暮らしの中に自然に溶け込んでいて、作家乃南アサさんの力量が分かると言うものだ。
我々十勝人は晩成社のスタートの苦労ぶりを「開墾の 初めは豚と 一つ鍋」と依田勉三が詠んだとならう。
この本での情景描写は、渡辺勝、カネ夫婦の家に依田勉三が遊びに来て酒を酌み交わしはじめる。そこに鈴木銃太郎も加わる。
晩成社は入植2年目にして、豚と山羊を手探りで買い始める。その豚の餌として野菜クズやホッチャレのあら、クズ豆などを囲炉裏の火で毎夜煮込んでいるのだが、その夜3人はその豚の餌を肴に呑み始める。
「 開墾の...」はその時の様子から生まれてきたものらしい。
後世の我々は、開拓の苦労をものともしない依田勉三の決意の現れている句と言う風に習ったが、乃南アサさんはチーム・オベリベリが生んだ詩として表現している。
この本の帯には「開拓に身を投じた実在の若者達を基にした、著者が初めて挑む長編リアル・フィクション」とある。フィクションである事を前提として第四章のこの下りを読んでいるうちに、小説家も講釈師も一緒だと感じた。
昔から言われる「講釈師 みてきた様な 嘘をつき」と言う言葉だが、乃南アサが描くチーム・オベリベリの雰囲気が何とも心地いい!