究極のフードロス解消産業
最近とみに「SDGs」とか「ESG投資」と言った意味不明のアルファベットが新聞やテレビを賑わしている。
そう言えば半世紀前の中学生だった頃「GATT関税と貿易に関する一般協定」とか「WTO世界保健機関」、東西冷戦時代の象徴「NATO北大西洋条約機構」など意味不明な単語を幾つも覚えさせられたものだが、ずんずん新しい略称が増えている。英語が一般的では無い日本人には辛いものだ。
イヤ、思い出話しをしている場合では無い。
今朝の日経新聞24〜25面に「フードロスを考える」と題した鼎談が目を引いた。日本のフードロスは年間643万t。その日本人一人が食べる米の量は年間54kgだが、フードロスは51kgとほぼ同量と載っている。感想はただ「ヘェー」だ。美味しく食べられる「賞味期限」とここまでに食べて下さいと言う「消費期限」を正確に理解していない人も多いとも書いてある。消費者の無理解が強調されているが、このフードロスは危害予防のためにこんなシステムを作り出したメーカーや生産者にも大きな責任があるのでは...
紙面の下段には食品ロス削減に向けた地域、団体、企業の取り組みが紹介されていた。こちらは工場残渣を液体飼料として豚に与え、その豚肉を社員食堂で利用とある。
こちらの企業は自社商品絹ごしとうふの製造過程で出るおからを牛の飼料として利用している。
こちらは店舗から出る食品残渣を堆肥化して関連農家に利用してもらい、収穫された農産物を再び店舗で販売する循環型農業を実施とある。
こう言った取り組みもフードロス削減なんだと気付かされた。
翻って酪農を考えてみるといずれにも勝とも劣らずの産業である事に気づく。
十勝ではビートの収穫作業が真っ盛り。日甜の工場も本格的に稼働し始めたが、その工場残渣と言えば、ビートパルプだ。ビートの根部から砂糖が抽出されるのだが、83%は残渣となりそれは全て乳牛の大好きな飼料となる。ビール工場が近ければビール粕。或いは酒粕。トウモロコの缶詰を作っている工場の近くではトウモロコシの芯と皮。大豆粕、デンプン粕、米糠、ふすまなど枚挙に暇が無い。
20年以上前、我が家でも豆類を栽培していた頃には大豆や菜豆の殻は立派な飼料だった。
又、餌を食べれば糞尿も体が大きいだけに沢山出てくるが、これは藁と混ぜられて発酵させ堆肥として利用される。立派な有機肥料だ。八王子の友人の牧場はコーヒー飲料会社から出るコーヒー粕を敷き料として使用。糞尿の臭いがせずコーヒーの匂いがする牧場として、街中で愛されている。
環境、社会、企業統治に配慮している企業を応援するESG投資や地球規模での持続可能な開発目標と言う意味のSDGsが取り沙汰されているが、酪農は1万年前からの究極的なフードロス解消産業で完全なるサスティナブル産業だ。
牛は人類にとって、無くてはならない素晴らしい家畜だ!