H松君
H松君は十勝管内で酪農を営んでいた、勝農の同級生だ。
2人の息子はそれぞれ独立。酪農の跡を継がないことを決断した様だ。
そして今年から新規就農者に経営を移譲し、夫婦車中泊で友人宅や観光地を巡る旅を重ね、青春時代の忘れ物を取り戻そうと必死だ。
しかし、優雅に見える老後とは裏腹に、牛舎周りをうろつくだけで新規就農者夫婦に嫌がられるらしく、朝はミルカーのモーターの音がしなくなってから表に出たり、夜も搾乳が終わった頃を見計らって外出から帰ってきたり。
農家には定年退職と言う概念が無く、経営移譲した後も見境い無く使われたり、良かれと思ってアドバイスなどしようものなら、露骨に嫌がられる。
振り返れば、自分自身もそうだった。
親父が還暦前くらいから農協の代表監事や組合長をそれぞれ10年位ずつ勤めたが、親父が家を留守にするようになってから、漸く我が世の春。自分の経営として思う存分に働くことが出来た。
勿論、失敗も成功も全て自己責任で...
牛にとっては迷惑な話しだったかもしれないが...
H松君、目をつぶろう‼︎