なつぞら7週
なつぞら、見てますか⁈
今週はなつが、いよいよ上京の決意を固める週だ。
柴田家の食卓でなつが重い口を開く。
「私、農業高校を卒業して何年かしたら、東京に行きたいと思うの。」
剛男「東京行って、どうしたいのさ?」
なつ「東京にいるお兄ちゃんを支えたいし、妹の千遙も探して3人で、また会えたらいいなって...」
剛男「なんで、そのうちなんだ?...」
なつ「だって......農業高校まで行かしてもらって、まだなんもしてないのに......」
泰樹「その必要はねえ、行きたきゃ行けばいいべ」
「お前に牛飼いさせたのは、わしの勝手だ」
「この家とも関係ねえ......出て行きたきゃ出て行けばいいべや...行くなら、すぐに出てけ」
「お前の顔は、二度と見たくねえ。いつでも勝手に出てけばいい」
なつはいたたまれなくなり、2階の自分の部屋に去り、荷物を詰め始める。
そこに富士子が来て「どうするの?どこ行くの?こんな時間に出て行けば、みんなに迷惑が掛かることぐらい、もうわかるべさ!」
なつ「...ここにはもう、申し訳なくていらんない」
そんななつの頬を富士子は引っ叩き「したら...これで、帳消しにすればいいべさ」
「出てくあんたに、申し訳ないなんて言われれくらいなら、憎まれたほうがよっぽどましだわ...」
「一人で苦しみたいなら...家族はいらないっしよ...」
と言う富士子の胸に頭を付け泣くなつ。
剛男「とにかく...これから、じっくり考えて......なつが自分で答えを出せばいい」
と家族皆が、なつに良かれと思う方向に話しは収まるのだが、
最後に語りで「なつよ......君は肝心なことを、まだ言ってないよな」で、明日に続く...
さて、この語りの言葉は50年前に勝農酪農科3年生に在学していた自分とオーバーラップし、印象深いシーンだ。
昭和41年、義務教育終了直前の中学校3年生の時だ。
来年はいよいよ高校受験で、両親と良く相談して受験する高校を明日まで決めて来る様に!と先生から言われた。
文彦「父さん、担任から明日まで受験する高校を決めてくるようにって言われたんだ。」
父「ほう、それでお前はどこを受けたいんだ⁈」
文彦「うん...」と少し間を置き、しかも言いにくそうに「帯広農高の酪農科を受けようかなって思ってるんだけど...」
父「そうか、それはいいな、頑張れや」
文字にしてみるとほんの一瞬の他愛の無い家庭風景に見える、が、自身が「農高を受けようと思う」この一言を口に出す前後には、自分の一生を左右する程の最大級の葛藤が心の中に渦巻いていた。
昭和39年中学校に進んで初めて英語に出会った。担当は木村徳広先生。
「ジス イズ ア ペン」「ジス イズ ア ブック」「ジス イズ アン アップル」と決して発音が素晴らしいとは思わなかったが...
しかし少年文彦はこの英語と出会い、ララミー牧場やローハイドなど広大な西部劇の舞台となっていた憧れのアメリカをバイクで縦横に走り回ってみたいとの思いに火がついた。この3年間は必死になって英単語を暗記もした。そして英語を自在に話せるようになりたいとの思いは強くなるばかり。
そして、件の高校受験。本心は普通高校に行ってもっと英語の勉強をしたかったのだが...!その事を言い出せずに、農高受験と相成ったのだ。
良い子を演じて本心を隠したばっかりに、自分の心に偽らず酪農に専念できる様になるには、後10年の時日を要したのだ。25才まで待たなければならなかった。この間家族、親戚には本当に心配、迷惑をかけてしまった。いや、一番迷惑を被ったのは罪のない牛達だ!!