常識をくつがえす
以前、自然破壊、環境破壊は人類が農耕を始めた事が起源だ!と、物の本に書いて有った。農業は人類の生命維持に対して多大な貢献をしていると自負していたものだが、視点を変えるとそうなるのか⁈と、いたく感動しまた失望したものだ。
今回、入院の暇つぶしにと送って頂いた"サピエンス全史"の読後感は、人類史を私の様な凡人には思いもよらない立ち位置から観察、表現していた稀有な歴史書だ!
アフリカでほそぼそと暮らしていたホモ・サピエンスが、食物連鎖の頂点に立ち、文明を築いたのはなぜか。キーワードは「虚構」だ。この虚構こそが見知らぬ人同士が協力することを可能にした!と言うのだ。
やがて人類は農耕を始めたが、農業革命は狩猟採取社会よりも苛酷な生活を人類に強いた、史上最大の詐欺だと、本書は言うのである。
私も筋金入りの百姓と自認しで憚らないが、やはり、第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇。"農"と言う字か入っていてとくに詳細に読んで見る。
本書から...
人類は250万年にわたって、狩猟・採取で生活の糧を得てきた。そしてこれらの動植物は人間の介在無しに暮らし、繁殖していた。
1万年前、いくつかの動植物の生命を操作し始める。
中近東では小麦の栽培とヤギの家畜化が始まり、中央アメリカではトウモロコシとマメ、南米ではジャガイモとラマ、中国では稲とキビそしてブタ、北米ではカボチャなどなど栽培し家畜化が進む。人類にとって農業革命は大躍進だ。
狩猟採取民は、動植物の生態に詳しく、自然の秘密を知っていた。その為、飢えや病気の危険が少なく、栄養状態により繁殖力が変わり、人口は自然にコントロールされていた。
一方、農耕民は手に入る食糧の総量は増えたけど、人口爆発と飽食のエリートを誕生させてしまった。
誰の責任か。王、聖職者、商人のいずれでも無い。犯人は小麦、イネ、ジャガイモなど一握りの植物種だ。ホモ・サピエンスが栽培化したのではなく、逆にホモ・サピエンスがそれらに家畜化されたのだ!と本書では言う。
小麦は自分に有利な形でホモ・サピエンスを操る。その証拠に小麦の嫌う畑の櫟を取り除き、小麦より強い雑草をとり、虫や疫病の発生を恐れ、ウサギ、イナゴ、そしてそれを好んで餌にする生き物に対して無防備だったので、絶えず目を光らせまもってやる。必要で有れば水もはこぶ。養分も貪欲に求めたのでサピエンスは動物の糞便まで集め、小麦の育つ地面を肥やしてやる事を強いられた。つまり朝から晩まで小麦の世話ばかり焼いて過ごすようになった。
そして栄養の偏り、収穫の不安定と境界をめぐる争い、保存食料を守る為他の集団との争いが起こるようになる。
狩猟採集か中心の時代、一つのオアシスでは100人が楽に暮らせた。しかし、多くの穀物が収穫できる様になると、そのオアシスでは1000人の人が暮らせる様になったが人々は病気や栄養不良に深刻に苦しみ始める。
では何故?
DNAの複製だ。1000人の複製は100人の複製に常に勝る。すなわち、以前より劣悪な条件下であってもより多くの人を生かしておく能力こそが農業革命の真髄だ。しかし、これは個々の人間の知ったことではない。
正気の人間が何故、自分の生活水準を落としてまでホモ・サピエンスのゲノムの複製を増やそうとするのか?誰もそんな取り引きに合意していない。
これこそが、農業革命の罠だと言うのだ。
女性が産みの苦しみを味わいながら、更に幾度も子供を産む。これこそがDNAの陰謀!と書いてた本も以前に読んだのを思い出す。